『君の名は。』感想~「忘れたくない」という願いと記憶の儚さについて

新海誠監督の『秒速5センチメートル』と『言の葉の庭』の感想は書いたのですが、2作品を観るきっかけになった、『君の名は。』の感想を書いていなかった!ので感想を。

最初テレビのCMで、RADWIMPSの『前前前世』と共に映像を見たとき、「あ、これ面白そうだなあ」と思った記憶があって。

で、しばらくはそのこと自体を忘れていたのですが、なにやら、「『君の名は。』はすごい!おもしろい!」ていう話をちょくちょく聞くようになりまして。

「そんなに面白いの?じゃあ…」と12月末ごろに見に行ってきました。

(ネタバレもありますので、まだの方は注意!)





映画『君の名は。』で、私の中で一番印象的だったこと

『君の名は。』については、たーーくさんの人のブログで取り上げられてて、あらすじやら解説やら感想やら色々書かれてますよね。

彗星が降る夜空であったり、山の緑のきらめきと、対照的な街の鮮やかさ、騒がしさ。
新海誠監督の作品はいつもすごいなあ、と思うのだけど、とにかく映像表現が美しい。

ストーリーもテンポ感があって面白かったし、運命的なロマンチックさもあるのだけれど、それでいて甘ったるすぎず。
人のツボを上手く突いてくるというか…。

設定に時々「ん?」って思ったり、無理があるんじゃ?って思うところも少しだけありますが、それにしても上手くできているなあ、と。

この映画の中で、私が個人的に一番印象的だったのは。

三葉と瀧くんが、相手のことを「忘れたくない」と願い、せめて名前だけでも…と必死に名前を覚えようとし、結局二人とも相手の名前を忘れて、連絡が取れなくなってしまうところです。

「どうして二人とも、相手の名前を覚えられないの? 暗記力ゼロなの?」というわけではなく、二人の入れ替わりに関することについては、夢を見ていたかのように、次第に忘れてしまうという不思議システム。

忘れたくないのに忘れてしまう、失いたくないのに、どんどん失われてしまう…。
そのことに気づいたときの不安とか焦りとか悲しみとか。

三葉と瀧くんのような入れ替わりを経験したことはなくても、そういう気持ちになったことってある気がするなあ…と。

人の記憶ってあいまいで、どんどん忘れてしまう!

今まで生きてきた中で、楽しかった思い出も、忘れたいくらい辛い思い出も色々あります。
忘れたい思い出は、それはそれでフェードアウトしてくれてよいのですが、問題は忘れたくない方の思い出。

楽しかった思い出を例えば、学生時代の事で思い返すと…

友人達と遊んでめちゃくちゃ笑ったり。
一緒に旅行に行って、朝まで語りあかしたり。
部活動の大会で、一致団結して戦った時の感動とか。

ただ、「ああ、楽しすぎる嬉しすぎる、幸せだなあ」って満足感だけ覚えているのだけど、実際その時話した内容とか、出来事とかって結構忘れてしまっているんですよね。

その時の動画が残っているとか、日記に書いていたりとか、そういう記録が無いとどんどん忘れてしまう。

あの時、あれだけ楽しかったはずなのに、人間の記憶ってあいまいで、どんどん忘れてしまうものなんだ。

楽しかった出来事も、その時の感情も。
ひどいときには、一緒にいた人の顔、名前でさえも。

そのことにある時気が付いて、軽く絶望した気がします。

もしどうしても忘れたくない、と思えるような人や出来事に遭遇したら

人の記憶って確かなようで案外もろいので、私たちは思っている以上に、忘れたくないことがあるなら、それについて、しっかりと覚えておく努力をしなければならないのかな、と思いました。

必死で相手の名前を何度も唱えたり、別れ際に相手の手に名前を書こうとした三葉や瀧くんのように。

映画の二人は、夢のように忘れてしまうという設定がありましたので、「忘れたくない」という願いむなしく、一旦相手のことを忘れてしまいましたが。

多分、普通の人の記憶も、ゆっくりと時間がかかるってだけで、夢のようにいつの間にか忘れていくものなのかもしれません。

忘れてたくないものは、大事に大事に覚えておこう。

そんなことをしみじみと感じた、『君の名は。』でした。

小説版はまだ読んだことが無いので、今度はこちらのアナザーストーリー読んでみたい!